『MEMSカートリッジを試聴して』 埼玉県 62歳 KT様

2019年12月早稲田大学で開催された1ビット研究会で「MEMSマイクを使ったカートリッジの開発」のテーマで、技術発表と試聴が行われるということを知り出席参加、そこで宮司氏がご自身の趣味の実験からMEMSに着眼した処や、DS Audioの光電カートリッジと同じく電磁変換を用いない方式に大きな可能性を感じました。

当日の宮司氏のプレゼンテーションを受けてその情熱とアイディアに、自分が子供の頃にクリスタルカートリッジのレコード再生機を買ってもらい夢中になって聴いていた頃の興奮が蘇ります。

1ビット研究会で披露されていた情報によると、針振動はカンチレバー近傍1.3mmという近傍に位置するMEMSまで直径0.3mmの音導管により接続され、つまり空気振動に変換された音声信号をMEMSマイクが拾い電気信号に変換するという構造のようです。

さて、その研究会での発表からわずか2年で製品化ということ、沢田工業さんからのモニター募集情報が舞い込み、ここは迷わず応募し今回試聴の機会を頂けることになりました。さっそく送られてきたセットを開けます。驚いたことにカートリッジの姿かたちは研究会で公開されたそれと大きな違いは無く、すでにその頃には主要な設計が完了していたこを伺い知りました。

MEMSはトランスデューサーとプリアンプが一体構造デバイスということで、電源供給を兼ねた専用のヘッドアンプユニットを経由してプリアンプのラインインプットへ接続します。

カートリッジ本体をヘッドシェルに取付けたのちアームへ装着し、針圧やインサイドフォースなど慎重に調整して、いつもの聴きなれたLP盤に針を落としました。

採用されているダイアモンドラインコンタクト針が音溝を正確にトレースしてくれる為か、左右音の分離が素晴らしく、決して誇張することない落ち着いた音のディテールがスピーカーから飛び出して来て、とても驚きました。

指定針圧は1.5gでしたが、取り扱い説明書にもあるようにほんの少し重い1.7gにセットすると、再生周波数帯域の上下が伸びて聴こえることも魅力です。同梱されていたDC24Vスイッチング電源をトランス式アナログ電源へ替えられれば、更なる音質向上も期待できるのではと思いました。

宮司氏のあくなき追及に惜しみない拍手を贈るとともに、今後の展開に期待したい新しいカートリッジです。